退院の日がやってきた。
朝、血液検査を済ませ、帰宅の準備をする。
心配されていたのは、貧血だった。
出産のときには出血も多かったし、身体の状態が気になっていた。
でも、検査の結果は問題なし。
「献血できるくらいですよ!」
先生にそう言われた。
いやいや、産後に献血って!!
とつっこみたくなるのを我慢。でも、嬉しかった。
ありがたいことに、私の身体は順調に回復していた。
産後なのに、スタスタ歩ける。
縫合するような傷がなかったからかな。
痛みといえば、ひどい後陣痛くらいだった。
こうして、無事に退院が決まった。
早く家に帰りたい。
そして、何よりも。
長女に会いたかった。
入院中は、夫が長い距離を運転して毎日面会に来てくれていた。
そこで毎日の長女の様子を聞いていた。
長女に会いたくてたまらなかった。
そして、たくさんの助産師さんにお世話になった。
身体のことを気にかけてくれるのはもちろん、私の気持ちにも寄り添ってくれた。
何気ない会話をしたり、話を聞いてもらったり。
そんな時間に、私は何度も救われていた。
次女がNICUにいるという不安な状況の中でも、
私が精神的に大きく崩れずに過ごせたのは、
助産師さんたちのおかげだったと思う。
入院生活は、私が想像していたよりもずっと快適だった。
それは決して、何もつらいことがなかったからではない。
つらい気持ちを抱えたままでも、安心して過ごせる場所があったから。
私の心に寄り添ってくれる人たちがいたから。
助産師さんって、本当にすごい仕事だと思った。
出産を支えるだけじゃない。
お母さんの身体も、心も、支えてくれる。
きっと、私よりももっと複雑な心境を抱えているお母さんたちもいると思う。
そんなひとりひとりに向き合っている。
本当に尊敬する。
心から、そう思った。
そして、いよいよ病棟を出る時間になった。
退院できることは、もちろん嬉しかった。
でも、次女はまだNICUにいる。
私だけが、先に帰る。
その現実は、やっぱりつらかった。
こういう経験は初めてではなかった。
長女のときも、黄疸の治療のために、
退院が1日延びたことがあった。
そのときも、私だけが先に退院した。
だから私は、ふと思った。
私って、こういう運命なのかな。
何事もなく、母子そろって退院する。
そんな当たり前だと思っていた光景が、私には訪れない。
どうしてなんだろう。
そんな気持ちになった。
もちろん、長女のときと次女のときでは、状況も気持ちも違う。
それでも、また同じように、赤ちゃんを病院に残して帰ることになった。
今回も、母子そろっての退院は叶わなかった。
病棟を出るとき、ある助産師さんが一緒に
病棟の外まで、見送ってくれた。
扉を開けて、少し進む。
そこに、夫と長女の姿があった。
久しぶりに会う、長女。
その姿を見た瞬間、涙があふれた。
会いたかった。
本当に、会いたかった。
私がいない間、たくさん寂しい思いをさせてしまったと思う。
まだ小さいのに、我慢させてしまったこともあったと思う。
ママがいなくて、きっと心細かったよね。
そう思うと、涙が止まらなかった。
会えたことが、ただただ嬉しかった。
でも。
長女の表情は、少し複雑そうだった。
ママに会えた嬉しさを、全身で表してくれる。
そんな再会を、私はどこかで想像していた。
でも、長女は少し違った。
嬉しいだけではないような顔。
まるで、
「ママ、もう大丈夫だよね?」
「もう、どこにも行かないよね?」
そう確かめているように感じた。
もちろん、本当にそう思っていたのかは分からない。
でも、私にはそう見えた。
私がいなかった時間。
長女もきっと、いろいろな気持ちを抱えていたんだと思う。
夫の実家で、泣く事を我慢している様子がある事は聞いていた。
寂しかったよね。
不安だったよね。
ごめんね。
そして、待っていてくれてありがとう。
長女の顔を見ながら、そんな気持ちがあふれてきた。
夫と長女に会えて、ようやく家に帰れる。
見送りに来てくれた、ある助産師さんに
最後にお礼を言ってお別れをした。
私だけが、退院する。
次女を残して帰る寂しさと、長女に会えた喜び。
いくつもの気持ちを抱えながら、私は病院をあとにした。
※この記事は個人の体験をもとに書いています。
医療上の判断については、必ず主治医・医療機関にご相談ください。


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