第26話|家族だけの時間

生まれてからのこと

次女が生まれたあと。

すぐに治療を始めることもできたと思う。

でも、先生たちは私たちに少し時間をくれた。

これからどんな治療をするのか。

どこまで治療をするのか。

夫と私で、これからのことを話す時間。

そして何より、

生まれたばかりの次女と、
家族3人で過ごす時間。

私たちは、3人で過ごせる部屋へ移動した。

次女には酸素マスクが当てられていた。

小さな身体。

一生懸命に呼吸している。

次女の状態は遠隔で確認できるようになっていた。

「何かあったらすぐに来ますね」

そう助産師さんに言ってもらった。

だから私たちは、
次女のそばにいた。

夫と私と、次女。

3人。

ずっとお腹の中にいた次女が、
今は目の前にいる。

小さな手。

小さな身体。

ちゃんと、生まれてきてくれた。

夫と顔を見合わせながら、
これからのことを話した。

治療をどうするのか。

どこまで頑張ってもらうのか。

何が次女にとって一番いいのか。

何が私たち家族にとって一番いいのか。

生まれたばかりなのに、
私たちはもう、そんなことを考えなくてはいけなかった。

でも、その間も私は次女を見ていた。

やっと会えたんだ。

ずっとお腹の中で一緒だったのに、
こうして顔を見られるのは初めて。

嬉しかった。

ただ、呼吸はやっぱり苦しそうだった。

時間が経つにつれて、
このままずっと一緒にいられるわけではないことも分かっていた。

そして、とうとう約束の時間になりNICUの先生たちが来た。

次女をNICUへ送り出す時間だった。

私は次女を見ながら、

「ごめんね」

と思った。

「今まで苦しかったよね」

お腹の中にいるときも。

生まれてからも。

ずっと頑張っていたんだよね。

それなのに私は、
何もしてあげられないような気がした。

次女をのせたベッドがNICUの先生に押されて部屋の外へ。

その姿が見えなくなった、

その瞬間、

「ああ、本当に離れてしまうんだ」

と思い、涙が止まらなくなった。

声を出して泣いた。

さっきまで、
3人で同じ部屋にいたのに。

私たちは、また離れ離れになる。

夫と私。

そして、次女。

生まれてからほんの数時間。

短い時間だった。

でも私にとっては、
忘れられない時間になった。

次女が生まれて、

私たちは確かに家族だけの時間を過ごした。

その時間だけは、
誰にも奪えない。

私たち家族の、
最初の時間だった。


※この記事は個人の体験をもとに書いています。

医療上の判断については、必ず主治医・医療機関にご相談ください。

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