車の中で、私は泣きながら電話に出ました。
電話の相手は、私が通っているクリニックの女性の先生でした。
中期スクリーニングで「脳室が大きい」と診断した先生ではありませんでしたが、
その先生は私の状況を把握してくれていたようでした。
私は、今までのことを話しました。
赤ちゃんの脳室が大きいと言われたこと。
大学病院を紹介されたこと。
でも、年末年始で受診が先になってしまうこと。
中絶できる期限が迫っていること。
そして、別の産婦人科でも「脳に異常がある」と言われたこと。
先生は私の話を聞いて、
「不安な気持ちがあるなら、また診るから来てください」
と言ってくれました。
でも、そのあとに言われた言葉。
それが、今でも忘れられません。
「この症状だけでは、中絶する理由にはなりません」
その言葉を聞いた瞬間、
私は、
「中絶できないんだ」
と思いました。
私はずっと、どうするべきなのか考えていました。
中絶についても調べていました。
費用も調べました。
もし、赤ちゃんに重い障害があるのなら。
家族の生活はどうなるんだろう。
長女はどうなるんだろう。
私たち夫婦に育てられるんだろうか。
いろんなことを考えていました。
だから、必要なら中絶することを考えていました。
でも。
「それでも中絶します」
とは、どうしても言えませんでした。
だって、まだ何も分からなかったから。
脳室が大きい。
脳に異常がある。
そこまでは分かった。
でも、それがどんな意味を持つのかは分からない。
もしかしたら、生まれてみたら普通なのかもしれない。
もしかしたら、何も問題がないのかもしれない。
そう思うと、怖くて決められませんでした。
お腹の中にいるのは、私の赤ちゃんです。
ずっと一緒に過ごしてきた、大切な命です。
「私の赤ちゃんだから、大丈夫」
そんな気持ちも、まだありました。
でも同時に、
「もし重い障害があったら?」
という怖さも消えない。
産むのも怖い。
中絶するのも怖い。
どちらを選んでも、後悔する気がしました。
私は、何が正解なのか分かりませんでした。
そして、もう一つ怖かったことがあります。
時間がないこと。
大学病院の受診日は、まだ先。
詳しいことが分からないまま、期限だけが近づいていました。
そして私は、仕事中の夫に泣きながら連絡しました。
電話越しに、私は今まで言われたことを全部話しました。
自分がどうしたいのかも、分からなくなっていました。
そんな私に、夫は言いました。
「私の決断を優先するよ」
その言葉を聞いて、私はまた泣きました。
夫も、きっとどうすればいいのか分からなかったと思います。
私だって分からない。
もう一度診てもらう事もできる。
でも、中絶する理由にはならない。
長女を連れてこのまま行くのは負担が大きすぎる。
何も分からないまま、もう大学病院の受診を待つことしかできないんだ。
そして、もうすぐ…。
私たちが選べる未来には、期限がありました。
※この記事は個人の体験をもとに書いています。
医療上の判断については、必ず主治医・医療機関にご相談ください。



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