第9話|「あと1週間くらいでしょう」そう告げられた日

妊娠中のこと

2回目の大学病院の受診。

今度は、専門のライセンスを持った先生に診てもらうことになりました。

向かったのは、MFICU(母体胎児集中治療室)のある病棟。

そこでエコーを受けました。

私はまだ、

「何もありませんでした」

と言ってもらえることを、どこかで期待していました。

エコーが始まると、先生は画面を見ながら、一つずつ確認していきました。

脳室は拡大している。

ただ、拡大自体は軽度。

でも、

小脳虫部は欠損しているように見える。

小脳自体も小さい。

そして、頭が明らかに小さい。

BPDは−3.7SD。
頭囲は−3.1SD。

「小頭症ですね」

そう言われました。

さらに、

かなりシビアな胎児発育不全。

臍帯も細い。

そして、臍帯動脈が2本とも逆流している。

これは、赤ちゃんがかなりしんどい状態にあるサインだと説明されました。

腹水も溜まっている。

そして、

18トリソミーの可能性もあるため、羊水検査を勧められました。

聞けば聞くほど、

頭の中が追いつかなくなっていきました。

脳室。

小脳。

小頭症。

胎児発育不全。

臍帯動脈の逆流。

腹水。

18トリソミー。

知らない言葉が、次々と積み重なっていく。

私はただ、

先生の言葉を聞くことしかできませんでした。

そして先生から、

今まで聞いたことのない言葉を告げられました。

「あと1週間くらいだろう」

赤ちゃんが、お腹の中でかなりしんどい状態になっている。

このまま、お腹の中で亡くなってしまう可能性が高い。

そういう意味でした。

「心臓が止まっているのは覚悟して、毎回の健診に来てください」

そう言われました。

そして、

「本当は今日、入院してほしい」

とも。

でも、私たちの心情を理解してくれて、

私に浮腫みが出てきたりしたら、すぐに受診するようにと先生は言ってくれました。

「何かあったら、すぐ来てください」

その言葉を聞いて、

私は病院をあとにしました。

そして、不思議なことに。

「あと1週間」

そう言われて、

私は少しだけホッとしていました。

もちろん、

赤ちゃんには生きていてほしい。

そう思っていました。

でも、それまでの私は、

何日も何日も、

赤ちゃんのことを考え続けていました。

どうなるんだろう。

どうしたらいいんだろう。

この子は大丈夫なんだろうか。

中絶できるのか。

生まれてきたらどうなるのか。

ずっと、現実から逃げられないような感覚でした。

でも、

あと1週間で終わる。

そう思ってしまったんです。

大学病院へ行ったことも。

異常があると言われたことも。

何度も調べ続けたことも。

あの苦しかった時間も。

全部なかったことになる。

そんなふうに、

私の「非日常」が終わることを期待してしまいました。

そして、

いつもの日常に戻りたかった。

長女と過ごす、いつもの毎日。

夫と過ごす、いつもの生活。

何も知らなかった頃の私に、

戻りたかった。

「あと1週間」

それは、

赤ちゃんに残された時間だと思っていました。

でも同時に、

私がこの苦しさから解放されるまでの時間

でもありました。

そんなことを考えてしまった自分を、

今でも鮮明に覚えています。

そして私は、

その「1週間」を過ごすことになります。


※この記事は個人の体験をもとに書いています。

医療上の判断については、必ず主治医・医療機関にご相談ください。

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