「あと1週間くらいでしょう」
そう言われた日から、少し時間が経ちました。
その間に私は、羊水検査を受けることになりました。
検査をする理由は、染色体異常があるかどうかを調べるため。
もし染色体異常が分かれば、赤ちゃんが生まれたあと、どこまで治療や延命措置を行うのか。
その選択をするためにも、先に知っておく必要がある。
先生から、そう説明されました。
羊水検査の日。
日帰り入院でした。
検査をする場所は、分娩室。
今までの妊婦健診とは、全く違う場所でした。
分娩室に入り、準備をしていると、
主治医の先生が、
「まず、心拍があるか確認して」
と言いました。
エコーで確認すると、
赤ちゃんの心臓は動いていました。
そして、
臍帯動脈の逆流も、
変わらずありました。
そのあと、消毒。
お腹を何度も消毒される感覚。
まるで手術を受けるようでした。
緊張で体が固まっていました。
麻酔が、
ちくっ。
と刺さる。
そのあと、
じわぁっと痛みが広がっていきました。
そして検査の針が入ってきます。
ずん。
ずん。
ずん。
3回くらい、
深く入っていくような感覚。
そのあとは、
お腹の中に何かが入っているような、
なんとも言えない異物感がありました。
怖かった。
緊張しすぎて、
だんだん頭がくらくらしてきました。
目が回りそう。
それでも、
ただ検査が終わるのを待ちました。
そして、ようやく終わりました。
病室に戻ってしばらくすると、
あの教授の先生が来てくれました。
大学病院で最初に診てくださった先生です。
私たちの今の状況を、
ちゃんと知っていてくれたようでした。
先生は、私に静かに話してくれました。
「それが赤ちゃんの寿命だから」
その言葉を聞いた瞬間、
胸が詰まりました。
そして、
「誰のせいでもない」
と。
先生は続けて、
こう話してくれました。
「1ヶ月とは言わないけれど、1週間でも1日でも、1時間でも長く、お母さんのお腹の中で一緒にいるのが、赤ちゃんが望んでいることだからね」
その言葉を聞いて、
私は泣きました。
先生の前で、
声を出して泣きました。
私はずっと、
「あと1週間で終わる」
と思っていました。
この苦しい時間が終わる。
いつもの生活に戻れる。
そう思っていた。
でも、
先生の言葉を聞いて、
初めて、
この子にとっては、1週間も、1日も、1時間も、大切な時間なんだ
と思いました。
私が終わってほしいと思っていた時間を、
この子は一生懸命、生きていた。
先生が病室を出ていったあとも、
私はしばらく泣いていました。
大部屋だったので、
周りには他の患者さんもいました。
どこからか、
すすり泣く声が聞こえてきました。
誰が泣いているのかは分かりませんでした。
でも、その声を聞きながら、
私はしばらく動けませんでした。
そして、病院をあとにしました。
帰り道の車の中。
長女が、
「もういっかい!」
と、いつもの歌をリピートしてほしがりました。
その歌には、
お腹の赤ちゃんにつける予定だった名前が入っていました。
何度も何度も、
「もういっかい!」
と言う長女。
いつもと変わらない、
何気ない帰り道。
でも私たち夫婦は、
その歌を聞きながら、
「今この歌を聞くのは辛いね」
と、泣きそうになるのを必死に堪えていました。
長女には、
まだ何も分からない。
いつも通り、楽しそうに歌を聴いている。
その傍で私たちは、
お腹の中にいる小さな命のことを考えていました。
あの日の帰り道のことを、
今でも覚えています。
いつもと変わらない車の中。
いつもと変わらない長女の声。
でも私たちの世界は、
もう以前とは同じではありませんでした。
そして、
羊水検査の結果を待つ時間が始まります。
※この記事は個人の体験をもとに書いています。
医療上の判断については、必ず主治医・医療機関にご相談ください。



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